Dual Agency(デュアルエージェンシー)とは、一人の不動産エージェント、または同じ不動産会社に所属する複数のエージェントが、売主と買主の双方を同時に代理・仲介することを指します。
通常、不動産取引では、売主側には「リスティング・エージェント(Listing Agent)」が、買主側には「バイヤーズ・エージェント(Buyer’s Agent)」がそれぞれ付き、売主・買主それぞれの立場に立って最善の結果を追求します。
しかし、Dual Agencyの場合、一つの立場(または同一の組織)が両者の仲介を担うため、役割が複雑になり、特に“利益相反”が問題になることがあります。
たとえば、売主はできるだけ高く物件を売却したいと望みますし、買主はできるだけ安く物件を購入したいと考えます。
Dual Agencyでは、その両者の間に立ち、どちらにも偏らず中立の立場を保つ必要があるため、エージェントにとって非常に高度な対応力が求められます。
そのため、ハワイ州を含む多くのアメリカの州では、Dual Agencyは法律で許可されている一方で、特別なルールや注意点が設けられています。とくに重要なのが、売主と買主の双方から、事前に書面で同意(Informed Written Consent)を得ることです。
これにより、両者はDual Agencyの意味、リスク、そしてその影響について十分に理解し、納得したうえで取引を進めることになります。
Dual Agencyを採用する場合、エージェントは「忠実な代理人」ではなく「中立な調整役」という立場になり、一方のクライアントのためだけにアドバイスをしたり、交渉力を全力で行使することができなくなります。
そのため、「信頼できるエージェントに任せたい」という想いがあっても、慎重な判断が求められるのです。
Dual Agencyは、ハワイでの不動産取引において実際に起こりうる仲介スタイルの一つです。効率やスピード、手数料面ではメリットがある反面、公平性や適切なアドバイスの提供という点ではデメリットも大きいため、しっかりと理解したうえで選択することが大切です。
エージェントがDual Agencyを提案してきた場合は、自分にとってのリスクとメリットを明確に把握し、必要であれば独立したバイヤーズエージェント(買主専任の代理人)を立てる選択肢も検討しましょう。不動産は高額な取引だからこそ、納得のいく判断をすることが重要です。